Морган Райс - 王の行進 стр 3.

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ソアのねらいの確かさで、石は城壁を越え、リースの部屋の開け放たれた窓に向かって飛んだ。室内の壁に当たる音を聞いた後、その音にギクリとした衛兵に見つからないよう、壁に沿って低くかがみながら待った。

しばらくは何も起こらなかった。結局リースは部屋にはいなかったのだと思い、気が沈んだ。いないなら、ソアはこの場所から逃げなくてはならない。安全な逃げ場を得る方法は他にはないのだから。リースの部屋の開いた窓の部分を見つめ、息をこらして待つ間、心臓がどきどきした。

かなり長いこと待った気がした。顔をそむけようとしたちょうどその時、窓から顔を出して両手を窓枠のところに置き、不思議そうな面持ちで外を見回す姿が見えた。ソアは立ち上がり、壁から数歩素早く離れ、片腕を高く上げて振った。リースが下を向き、ソアに気づいた。ソアの姿を認めて表情が明るくなった。たいまつの灯りで、ソアの場所からもはっきりと見えた。嬉しそうな顔を見て、ソアは安心した。それで知りたかったことのすべてがわかった。リースは自分を売ったりしない。

リースが待つように合図したので、ソアは壁に急いで戻り、ちょうど衛兵が向きを変えたとき低くしゃがんだ。

いつでも衛兵から逃げられるよう態勢を整えながら、どれくらい待っただろう。外壁のドアから飛び出るように、やっとリースが現れた。息を切らして左右を見回し、ソアを見つけた。

リースは急いでやって来て、ソアを抱きしめた。ソアは嬉しかった。キーキーという声が聞こえ、見下ろすとリースのシャツにくるまれたクローンがいた。リースがソアに渡す時には、クローンはシャツから飛び出さんばかりだった。

成長し続ける白ヒョウの子ども、クローンは、ソアがかつて助けたあげたのだった。ソアの腕に飛び込み、抱きしめてやると、泣きながらソアの顔をなめた。

リースは微笑んだ。

「あいつらが君を連れていった時、クローンはついていこうとしたんだ。だから僕が捕まえておいた。危ない目にあわないように、と思って。」

ソアはリースの腕をつかんで、感謝の気持ちを表わした。そしてクローンがあまりにも自分のことをなめ続けるので、笑った。

「僕も寂しかったよ。」そう言って、ソアもクローンにキスして笑った。「静かに。衛兵に聞こえるかも。」

クローンも理解したかのように黙った。

「どうやって逃げたの?」リースが驚いて尋ねた。

ソアは肩をすくめた。何と言ったら良いかわからなかった。自分の力について話すのは今でもあまり居心地が良くなかった。自分でもよくわかっていないのだ。奇人のように他人から思われたくなかった。

「きっとついていたんだよ。」そう答えた。「チャンスがあって、その時に。」 「みんなが君をつるし上げなかったのが驚きだ。」リースが言った。

「暗かったからね。」ソアが言った。「誰にも僕だとわからなかったと思う。今のところはね。」

「王国の兵士が全員君のことを探しているのは知ってる?父が刺されたのは知っているかい?」

ソアは真剣な顔で頷いた。「大丈夫なのか?」

リースの表情が沈んだ。

「いや。」険しい顔付きで答えた。「危険な状態だ。」

ソアは、まるで自分の父親であるかのように打ちのめされた気がした。

「僕が関わっていないのはわかってくれるよね?」ソアはそう願いながら聞いた。他の者がどう思おうと気にならなかったが、マッギルの末息子である自分の一番の友には、自分が無実であることをわかって欲しかった。

「もちろんだよ。」リースが言った。「でなければ、今ここにいないよ。」

ソアはほっとした。感謝してリースの肩を抱いた。

「でも、王国全体は僕ほど信用していない。」リースが付け加えた。「君が安全なのはここから遠い場所だ。僕の一番速い馬と、必要な物を用意して、遠くへ行けるようにする。すべてが治まるまで隠れていなければならない。真犯人を見つけるまで。今は誰も落ち着いて考えられないから。」

ソアは首を振った。

「僕は行けない。」ソアが言った。「そうすれば怪しく見える。僕がやっていないということを知ってもらう必要がある。問題からは逃げられない。汚名をそそがなければ。」

リースは首を振った。

「ここにいれば、君は見つかる。また牢屋へ逆戻りだ。そして処刑される。それまでに群衆に殺されなければね。」

「そういうことも受けて立たないと。」ソアが言った。

リースは長いことじっとソアを見つめた後、懸念から賞賛の面持ちに変わった。最後に、ゆっくりと頷いた。

「君は誇り高い。そしてばかだ。ものすごくばかだ。だから好きなんだ。」

リースが微笑んだ。ソアも微笑み返した。

「お父上に会う必要がある。」ソアが言った。「僕ではないと、何にも関係していないと、直にご説明する機会が必要なんだ。もしお父上が僕に判決を下すなら、そうなったって良いさ。でも、チャンスが欲しい。わかっていただきたいんだ。お願いしたいのはそれだけだ。」

リースは友の言うことを整理しながら、真剣に見つめ返した。長いこと経ってからやっと頷いた。

「父のところに案内はできる。裏の通路を知っているから。父の部屋につながっているんだ。でも危険が伴う。一度部屋に入ったら、自分でなんとかしなければならない。出口はないからね。その時点で僕ができることは何もない。君は死ぬことになるかも知れない。本当にそんなことに賭けたいのか?」

ソアは本気で頷き返した。

「良いだろう。」リースが言った。そして突然手を伸ばし、ソアにマントを投げた。

ソアはそれを取り、びっくりした見た。リースがずっと計画していたのではないかと気づいたのだ。

ソアが見上げると、リースが微笑んだ。

「ここに留まる、ってばかなことを言うのはわかってたよ。自分の親友が言うのはそれ以外考えられないからね。」

第四章

ガレスは部屋の中で歩きながら、その夜起こったことを不安な気持ちで思い起こしていた。宴会で起きたことが信じられなかった。なぜすべてが失敗に終わったのか。あの愚かな少年、よそ者のソアに、どうやって自分の服毒計画をかぎつけ、そのうえ杯を途中で奪うということができたのか、さっぱりわからなかった。ガレスは、ソアが飛び込んで来て、杯を叩き落した瞬間を思い出した。杯が落ちる音を聞き、ワインが床にこぼれて自分の夢や野望もそれと共に流れていくのを見た。

その瞬間、ガレスは打ちのめされた。それまで目標にしてきたことが打ち砕かれたのだ。そしてあの犬がワインをなめて死んだ時、自分は終わったと思った。自分の今までの人生がすべて脳裏をよぎり、父親を殺そうとしたことが見つかって終身刑を言い渡されるのを思い描いた。もっと悪いことには、死刑に処せられるかも知れない。愚かだった。こんな計画を立てるのも、あの魔女を訪ねることも、するべきではなかった。

少なくとも、ガレスの行動だけは素早かった。賭けに出て、飛び出し、ソアを最初に非難した。思い出すにつけ、自分が誇らしく思える。なんと素早い反応だったろう。 考えがひらめいた瞬間だった。そして驚いたことに、それが効を奏した。ソアは連行され、その後は宴もまた落ち着いたようだった。もちろん、前と同じ状態というわけにはいかない。だが少なくとも、疑惑はあの少年に向いたようだった。

ガレスは事態がそのままであってくれることを願った。マッギル家の者を狙った暗殺未遂があってから数十年が経っていたため、この出来事に対する取り調べがより本格的に行われることになるのでは、と恐れた。考え直すと、毒を盛ろうなどというのは愚かだった。父は無敵だ。ガレスはそのことを知っていたはずなのに、無理をし過ぎた。そして今では、疑いが自分に向くのも時間の問題だと考えずにはいられなかった。手遅れになる前にソアの罪を証明し、彼が処刑されるためにできることは何でもしなければならないだろう。

ガレスは、少なくとも自分の失敗の埋め合わせはした。未遂に終わった後、暗殺を中止し、今はほっとしていた。計画が失敗し、自分の中のどこか奥のほうで、本当は父を殺したくない、手を汚したくない、という気持ちがあることに気づいた。自分は王位にはつかない。王にはならないだろう。今夜の出来事を経て、そのことを受け止められた。少なくとも、自分は自由でいられる。秘密、裏工作、常に付きまとう、見つかることへの不安。こうしたストレスに対処することは自分にはもうできない。ガレスには重荷だった。

歩き続けているうちに夜も更け、やっと少しずつ落ち着いてきた。自分らしさを取り戻して、ちょうど休もうとしていたところに、突然衝突音がしたので振り返ると、扉が開くのが見えた。ファースが目を見開き、まるで追っ手が来るかのようにひどく取り乱して部屋に飛び込んで来た。

「死んだよ!」ファースが叫んだ。「死んだんだ!僕が殺した。死んだよ!」

ファースは半狂乱で声を上げて泣いていた。ガレスはファースが何を言っているのかわからなかった。酔っているのか?

ファースは叫び、泣きわめき、手を挙げて部屋中を走り回った。その時、ガレスはファースの手が血だらけなのに気づいた。黄色のチュニックにも血のしみが付いていた。

ガレスは心臓がドキッとした。ファースは人を殺してきたのだ。でも一体誰を?

「誰が死んだって?」ガレスは詰問した。「誰のことを言っているんだ?」

ファースは気が狂ったようになっていて、集中することができない。ガレスは走って近づくと、腕をつかみファースを揺さぶった。

「答えるんだ!」

ファースは目を開けて、野生の馬のような目をしてじっと見つめた。

「君の父上だよ!王様だ!僕の手で殺したよ!」

その言葉でガレスは自分の心臓がナイフで突かれたような気がした。

目を大きく開け、凍り付き、全身が萎えていくのを感じながら見つめ返した。握っていたこぶしを緩め、後ろに退いて、息を静めようとした。血を見て、ファースが本当のことを言っているのはわかった。どういうことか推測することさえできなかった。馬屋の少年のファースが? 自分の友達のうちで最も意志の弱い者が父を殺した?

「でも・・・どうしてそんなことができるんだ?」ガレスは息を呑んだ。「いつ?」

「王の部屋で」ファースが言う。「たった今、刺してきた。」

このニュースが現実味を帯び、ガレスは冷静になった。扉があいていることに気づき、走って行って衛兵が誰も見ていないことを確かめてからバタンと閉めた。幸い、回廊には誰もいなかった。ガレスは重い鉄のかんぬきをかけた。

急いでもとのところへ戻った。ファースはまだ興奮していて、落ち着かせなければならない。答えてもらう必要があった。

ガレスはファースの肩をつかんでこちらに向かせ、手の甲で叩いて止めさせた。ファースはやっと自分に注意を向けた。

「全部話すんだ。」ガレスは冷たく命じた。「起きたことを全部言うんだ。どうしてこんなことをした?」

「どうして、ってどういうこと?」ファースが混乱して聞いた。「殺したがっていたじゃないか。毒は失敗したから、手伝おうと思って。君がそうして欲しいだろうと思ったんだ。」

ガレスは首を振った。ファースのシャツをつかみ、何度も揺さぶった。

「なんでこんなことをしたんだ!?」ガレスは叫んだ。

世界中が崩壊していくような気がした。ガレスは、自分が父に対して良心の呵責さえ感じていることにショックを受けた。理解できなかった。たった数時間前まで、父が食卓で毒を飲んで死ぬことを望んでいたのに。今、父が殺されたことで親友が死んだかのようにショックを受けている。後悔の念に打ちのめされている。自分の中のどこかでは父に死んで欲しくないと思っていた。特にこんな風には。ファースの手によってなんか。剣でなんか。

「わからないよ。」ファースが哀れっぽい声で言った。「ちょっと前まで自分で王を殺そうとしていたじゃないか。杯で。喜んでくれると思ったのに!」

自分でも驚きながら、ガレスは手を挙げてファースの顔を叩いた。

「こんなことをしろとは言っていない!」ガレスが吐き出すように言った。「こんなことをしろとは言っていないからな。どうして殺した?見てみろ。お前は血だらけじゃないか。もう僕たちは終わりだ。衛兵たちが僕らをつかまえるのは時間の問題だ。」 「誰も見ていないよ。」ファースは主張した。「衛兵の交代の時に抜け出したから、誰も見ていない。」

「武器はどこだ?」

「置いてこなかったよ。」ファースは自慢げに言った。「そんなに馬鹿じゃない。処分した。」

「どの剣を使った?」ガレスはそれがどういう意味を持つか考えながら聞いた。後悔が懸念へと変わった。このばか者が残したかも知れない手がかりを逐一思い描いた。自分にたどりつくかも知れない手がかりのすべてを。

「突き止められないのを使ったよ。」ファースは誇らしげに言った。「誰のでもない、切れ味の悪いやつだ。馬屋にあった。他にも同じようなのが4本ある。自分だとはわからないさ。」そう繰り返した。

ガレスは血の気が引いた。

「短い剣だったか?柄が赤くて刃にカーブがついてる。僕の馬の脇の壁にかかっていたのかい?」

ファースはいぶかりながら頷いた。

ガレスがにらみつけた。

「ばか者め。誰のものか突き止められる剣だぞ!」

「でも何も彫られていない!」ファースは怖くなり、声を震わせて言い返した。

「刃には印がないが、柄にあるんだよ!」ガレスが叫んだ。「下のところに!ちゃんと見なかったんだな。このばか者。」ガレスは顔を赤くして前に出た。「僕の馬の記章が下に彫られている。王家を知る者なら誰でもあの剣が僕のものだと突き止められる。」

ガレスは途方に暮れているファースを見つめた。彼を殺してしまいたかった。

「あれをどうした?」ガレスが詰め寄る。「まだ持っていると言ってくれ。持って帰ってきたと。頼む。」

ファースは息を呑んだ。

「注意して捨てたよ。誰にも見つからない。」

ガレスは顔をしかめた。

「どこだ?」

「石の落とし樋に捨てた。城の室内用便器の中だ。中身を毎時間川に捨てている。心配しないで。今頃は川の底だ。」

城の鐘が突然鳴った。ガレスは振り返って開いた窓へと走った。心が乱れている。外を見ると、下で起きている混乱や騒ぎが目に入った。群衆が城を取り囲んでいる。鐘が意味することはただ一つ。ファースは嘘をついていない。王を殺したのだ。

ガレスは全身が氷のように冷たくなるのを感じた。自分がそれほど大きな悪事を引き起こしたとは想像できなかった。そしてよりによってファースがそれをやってのけたとは。

突然、扉を叩く音がした。そして扉が開くと、衛兵が数人飛び込んで来た。一瞬、ガレスは自分たちが逮捕されるのだと思った。

だが驚いたことに、彼らは止まって直立不動の姿勢を取った。

「殿下、父君が刺されました。暗殺者はまだ捕まっていません。安全のため、部屋にいらして下さい。王は重傷を負っておられます。」

その最後の言葉にガレスのうなじの毛が逆立った。

「怪我を?」ガレスが繰り返した。のどにその言葉が突き刺さった。「ではまだ生きておられるのだな?」

「はい、殿下。神が王とともにおられます。生き延びて、この凶悪な行為が誰の仕業か知らせてくださるでしょう。」

短く敬礼をすると、衛兵は急いで部屋を出て行き、音を立てて扉を閉めた。

ガレスの怒りは頂点に達した。ファースの肩をつかんで部屋の中をひきずって行き、石の壁に叩き付けた。

ファースは恐れおののいて言葉を失い、目を見開いて見つめ返した。

「何をした?」ガレスが叫んだ。「もう二人ともおしまいだ

「でも・・・でも・・・」ファースはどもった。「・・・絶対死んだと思ったんだ!」

「何でも確かだと思うんだな。」ガレスは言った。「そしてそれが全部間違ってる!」

ガレスに考えが浮かんだ。

「あの短剣だ」ガレスが言った。「手遅れになる前に、あれを取り返すんだ。」

「でも捨ててしまったよ。」ファースが言う。「川に流れてったよ!」

「室内用便器に捨てたんだろ。それがすなわち川に行ったということにはならない。」 「たいていはそうなるよ!」ファースが言った。

ガレスはこの愚か者のへまにはもう我慢できなくなっていた。ファースの前を通り過ぎてドアから出て行った。ファースが跡を追う。

「一緒に行くよ。どこに捨てたか教える。」ファースが言った。

ガレスは回廊で足を止め、振り向いてファースを見つめた。彼は血だらけだ。衛兵が見つけなかったのが驚きだ。運が良かったのだ。ファースは今まで以上に障害となる。 「一度しか言わないぞ。」ガレスがにらんだ。「今すぐ僕の部屋へ戻って服を着替えろ。そして着ていたものを燃やすんだ。血がついているものはすべて処分してこの城から消えろ。今夜は僕から離れていてくれ。わかったか?」

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